シンポジウム

第28回日本畜産学会若手企画シンポジウム(2025・岐阜大学)

ランチョンセミナー
動物の心と身体を科学で読み解くには
〜バイオエレクトロニクスとAIが紡ぐ畜産の未来〜

開催日時:
2025年9月13日(土)12:00-13:00
開催場所:
岐阜大学 応用生物科学部101(第1会場)
演者:
宇戸 禎仁 先生 (大阪工業大学工学部生命工学科 生体電子工学研究室 教授)
世話人:
池田 裕美(麻布大学)
澤戸 利衣(農研機構)
島元 紗希(鹿児島大学)
協賛団体:
一般財団法人旗影会
参加者数:
99名(事前申込者+若手企画委員)+当日参加11名 計110名

日本畜産学会第133回大会にて開催された若手シンポジウムランチョンセミナーは、「動物の心と身体を科学で読み解くには〜バイオエレクトロニクスとAIが紡ぐ畜産の未来〜」というテーマで開催いたしました。

ご講演いただいた宇戸禎仁先生は工学分野でご活躍されており、ヒトを対象とした非侵襲型のバイオセンサの開発や、AIを用いた画像解析に関する研究を精力的に進めてこられました。これまで畜産学分野との関わりはなかったそうですが、共同研究を通じてご縁をいただき、その調査地は本大会の開催地である岐阜大学(美濃加茂農場)にて実施しております。そのような背景を持つ先生にご登壇いただけたことは、またとない貴重な機会となりました。この場をお借りして、宇戸先生に改めて感謝申し上げます。

近年、アニマルウェルフェアについて考える機会が日本においても増加の一途を辿っており、国際的な課題となっています。この課題解決の一つとして、バイオエレクトロニクスやAIの活用が注目されています。本セミナーでは、実際にどのような技術が開発されているのか、科学的に評価・数値化する方法について実演を交えてご講演いただきました。

宇戸先生におかれましても初参戦の日本畜産学会大会であるため、ご不安も多かったことと拝察いたします。異分野なので参加者はどうなるか・・・と思っておりましたら事前参加登録者数は100名を超え、学生、留学生、教員、企業関係者と多岐にわたる層からご登録いただきました。畜産分野と工学との連携に対する関心の高さが窺えました。セミナー開始時にふと会場を眺めてみますと、当日参加の方も含め、会場の前方から後方まで埋まるほどの方々にご参加いただくことが出来ました。ご参加いただいた皆様には、心よりお礼申し上げます。

ご講演では、まず学生さんによる吸光度計作製についてご紹介いただきました。普段使用している高価な吸光度計が、学生さんが自作できるだけでなく、その精度の高さに驚嘆いたしました。また、ドローンによる上空からの撮影動画を用いて、放牧中のウシの行動を解析する技術としてProcessingというフリーソフトを用いた画像処理を実演いただきました。色を追跡するプログラムや、「顔」を認識し追跡するプログラムについても実際に動かしていただいたことで、理解が一層深まりました。特に、色追跡の実演では、宇戸先生のお顔がサンプルでの赤色よりも赤く認識されてしまうというハプニングがあり、会場 は和やかな笑いに包まれました。その他、ニューロメーターやコロナ禍でも活用されたパルスオキシメーターの非接触型タイプのご紹介、アニサキス駆除技術など、多岐にわたる研究紹介をいただきました。胸が躍るお話ばかりでワクワクするとともに、宇戸先生のユーモア溢れるお人柄もあり、楽しく学びの多いご講演となりました。その後の質疑応答では、5〜10分という限られた時間では収まりきれないほど活発な議論が繰り広げられました。

事前参加登録者を対象にgoogleフォームを活用したアンケートを実施したところ、留学生を含む半数以上の皆さまからご回答をいただくことができました。『新たな視点や応用につながりつつ、難しい説明もなく聞きやすかった』『アイデアと実装の具体例をたくさん示してもらえ刺激になった』『異分野からの畜産分野へのアプローチ方法が面白いと感じた』『既成の部品とソフトで割と簡単に画像処理できることがわかり収穫であった』『ユーモアのあるお話で、専門分野ではないが引き込まれた』『非侵襲の解析技術が発展することは、畜産業にとって有益でその一端を知ることができた』など大変好評なご感想を多数いただきました。一方で、『プログラムの経験がないのでよくわからなかった』『もう一歩踏み込んだ専門的な立場からの開発技術とその将来展望を述べていただきたかった』とのご意見もあり、異分野のご講演内容をどこまで噛み砕くか・どこまで踏み込むかという難しさを改めて実感いたしました。この点に関しまして、ご期待に沿えず申し訳ございませんでした。

今回のアンケートでは、昨年に続き自由記入欄を設けました。『宇戸先生のようなご専門の方とどんどん農業・畜産分野が協力し新しいシステムを作っていくことが必要であると感じた』『今後も畜産系と違う世界とつながる企画をいただけると視野が広がり研究の発展につながると思う』『宇戸先生と知り合う機会を与えてくれてよかった』といった内容のご意見を多数いただき、今後の畜産分野を発展させていくためにも異分野連携に関する期待値が高いことを実感いたしました。また、『宇戸先生の研究へのわくわくした感じが伝わった』といったご感想もあり、研究の原動力でもある“ワクワク感”が皆さまへ伝わるセミナーとなりましたこと、大変嬉しく思います。

若手企画委員に対しては、『毎回お弁当を楽しみにしています』とのお声もいただき、今回のお弁当も悩み抜いて選定した甲斐がありました。また、『時間が許すのであれば若手委員の皆さんと議論も取り入れて欲しかった』『現在畜産分野で役立っている新技術はどのようにして生まれたのか、その過程や苦労を聞くと若手研究者に大いに役立つのでは』とのご意見もいただきました。若手企画一同、これからも先生方のご経験やご活躍に学びながら、畜産分野のさらなる発展を目指し、自らの研究をさらに高めていきたいと思います。様々な貴重なご意見・ご感想に感謝申し上げます。

最後になりますが、ご多忙の中示唆に富むご講演をしてくださった宇戸禎仁先生に改めて御礼申し上げます。また、本シンポジウムの開催にあたり協賛いただきました一般財団法人旗影会、ご助力いただきました大会実行委員の先生方に心より感謝申し上げます。帯広畜産大学・口田圭吾先生より快く写真を提供いただきました、厚く御礼申し上げます。

文 池田 裕美(麻布大学)

ご講演いただいた宇戸禎仁先生

色追跡プログラムの実演の様子

講演を熱心に聞く参加者の皆さま

サイトポリシー

当サイトは公益社団法人日本畜産学会若手企画委員会のwebサイトです。当サイトの著作権は公益社団法人日本畜産学会若手企画委員会にあります。
サイトの内容を無断で複写・複製することはできません。リンクはフリーです。