シンポジウム

第26回日本畜産学会若手企画シンポジウム(2023・帯畜大)

ランチョンセミナー
どうする?どうなる!?日本の畜産業界 
〜現状と現場を知る〜

開催日時:
2023年9月19日(火)11:45-12:45
開催場所:
帯広畜産大学 第Ⅱ会場(大講義室)
演者:
小池 晋 氏(JA全農岐阜 畜産部畜産生産課)
「岐阜県における飛騨牛生産の現場と繁殖研修事業の取り組み」
田中 秀一 氏(ノーサンファーム株式会社)
「研究開発の場としての酪農場の可能性について」
権藤 浩司 氏(日本農産工業株式会社 畜産技術センター 養鶏グループ)
「飼料メーカー(日本農産工業株式会社)における採卵鶏飼料の開発について」
世話人:
大塚 剛司(岐阜大)、長澤 麻央(名城大)、鈴木 貴弘(九州大)、渡邊 源哉(農研機構)、吉田 悠太(茨城大)
協賛団体:
一般財団法人旗影会
参加者数:
128名

4年ぶりに待望の対面開催となった今回の若手シンポジウムランチョンセミナーは、「どうする?どうなる!?日本の畜産業界 〜現状と現場を知る〜 」というテーマで開催いたしました。我々“畜産学”の研究者は多くの場合、日本の“畜産業”の効率化や生産性向上、畜産物の利用促進を目指して日々研究室に篭る毎日です。畜産農家を一軒一軒回って現状を聴く機会はなかなか無く、どうしても“畜産学”と“畜産業”は乖離してしまいます。そこで本セミナーでは、直接農家さんとやりとりをすることが多いJA全農職員の小池様、実際に企業の研究牧場の社長を務める田中様、農家さんのニーズに直結する飼料の開発に携わる権藤様を招いて、それぞれの立場から畜産業の現状と現場についてご講演いただきました。

小池様は岐阜県が誇る飛騨牛生産農家の現状と現場の声、さらに岐阜県・JA全農岐阜・岐阜大学の産官学で行われている“飛騨牛繁殖研修事業”の内容について話されました。特に岐阜大学も参入する飛騨牛繁殖研修事業は、将来の畜産農家の卵を見つけ、育成する事業です。事業に携わる筆者も、実際に畜産業を一から始める大変さを間近で見て、ある種研究者としての無力さを肌で感じていました。畜産業に対して、我々研究者はどこまで寄り添えるのか、再考する良い機会になったのではないかと思います。

田中様からは、畜産農家が抱える人手不足、その原因の一つである過酷な労働環境にフォーカスを当ててご講演いただきました。この課題に対応すべく、日本の酪農業では搾乳ロボットの導入が進められており、導入のメリットとして、労働時間の短縮だけでなく、乳量増加、乳質の改善、繁殖成績改善および動物福祉の改善に役立つことをご紹介頂きました。今後のIoT技術の発展に伴い、畜産農家の労働環境が改善され、人手不足や後継者不足の解消に繋がればと期待しております。

権藤様からは、産卵成績には影響を与えずに、食下量ならびに排泄量を減少させるという鶏用飼料SUQNAについてご紹介いただきました。SUQNAは、養鶏農家で課題となっている排泄物処理にアプローチできるだけでなく、環境負荷を低減させることでSDGsにも配慮した製品となっています。大学や研究機関で研究に携わる方の多くは、いかに産卵成績を上げるかに注目してしまいがちです。そんな中、養鶏農家の声を聴き、排泄量を減らそうという発想にたどり着いたのは現場との繋がりがあってこその発想だと思いました。

今回のランチョンセミナーでは参加者の皆様にご協力頂き、本講演に関する多くの意見を頂きました。まずは、この場を借りて御礼申し上げます。アンケート内容をみてみますと、「現場のリアルな声や現状を知ることができてよかった」という意見が多かったです。多くの研究者の方が“畜産業”の実情には興味があるものの、なかなかそのような機会に恵まれていないということが伝わってきました。他にも、「研究者側の問題意識が現場に向く良いきっかけになったのでは?」というコメントも頂き、今回の企画の主旨が皆様に伝わったことを嬉しく思っています。また、「学生にはよかったかもしれないが、お弁当のザンギがヘビーだった」とのご意見も頂きました。若手企画委員会のお弁当選定会議で、「やはり畜産物を食べるべきだ」との意見が多く、評価の高いお弁当を選定した結果・・・です。次回への引継ぎの際は、SDGsの一環として、お弁当の「緑化」にも力を入れるよう提案させて頂きますので、ご容赦頂ければと存じます。

今回のシンポジウムで世話人をやらせて頂いて、“畜産学”の成果を“畜産業”へと還元できるような研究テーマの設定を行うためにも、我々研究者は現場の畜産農家の方と密に連携を取れるような地盤を整えていくことが重要であると再認識いたしました。みなさまにとっても、今後の“畜産学”の在り方について、もう一度考えてみる良いきっかけになったのであれば幸いです。最後になりますが、示唆に富むご講演をしてくださった小池様、田中様、権藤様に改めて御礼申し上げます。また、本シンポジウムの開催にあたり協賛いただきました一般財団法人旗影会、ご助力いただきました大会実行委員の先生方に心より感謝申し上げます。

文 大塚 剛司(岐阜大)・長澤 麻央(名城大)

オンラインでご講演いただいた小池様(左)、搾乳ロボットについて説明する田中様(中央)、SUQNAについて紹介する権藤様(右)

講演を熱心に聞く参加者

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