研究紹介

私の研究紹介

小川 伸一郎(東北大学)
2020年1月

2019年度より委員となりました小川伸一郎(おがわしんいちろう)と申します。よろしくお願いいたします。

私は現在、東北大学農学研究科の動物遺伝育種学分野(URL: https://www.agri.tohoku.ac.jp/animalbreeding/top.html)に所属しています。ここで私は、黒毛和種(霜降り肉!)や豚の育種改良に関する研究に取り組んでいます。とくに今は、集団の再生産に係る繁殖性(子作り能力)の効率的な改良に資する研究に熱を注いでいます。わが国で生産される畜産物は、諸外国のものに比べて質で勝る部分はあるものの生産量で課題を抱えています。したがって、高品質生産を安定的に持続させていくためにも繁殖性向上を目指す意義は大きいと考えます。繁殖性の向上には栄養や設備などの環境状況の改善ももちろん大事ですが、私は、個体発生の根幹につながる『遺伝』の仕組みを利用した『育種』と呼ばれるアプローチを用いております。我々もそうですが、畜産で対象とする動物はみな、親から『遺伝子』を受け継いで誕生します。遺伝子の中には体づくりに必須の情報が満載である一方、遺伝子に詰まっている情報には個体差があることも分かってきました。育種では、このような遺伝子に含まれる個体差の中から我々にとって好ましいものを上手に選んでいく方法の開発を研究テーマの1つとします。また、ときには自ら実験的に育種をやってみることもあります。ただし、大学で育種するには牛や豚は不向き(大きいし時間がかかるし金かかるし…)なので、モデル生物として実験用マウス集団を用いて育種実験を行います。

面白さが少しでも皆様に伝わればと思い、当分野についてざっくりと簡単にご説明いたします。当分野の基礎学問の一つに「集団遺伝学」があります。つまり、育種が対象とするのは個体というより集団になります。遺伝というシステムを応用した育種によって、家畜を集団レベルで変えようとします。育種の成果は遺伝により次世代以降にも影響を及ぼすので、とてもインパクトの大きな仕事になります(と、私は考えています)。また、当分野の大きな特徴として、統計学やコンピューター(プログラミング)を重用する点が挙げられます。何故ならば、集団から得られる大規模数値データを分析する必要があるからです。とくに最近では、次世代シーケンサーの開発・発展によりゲノムに関する情報が大量に得られるようになったので、扱うデータのサイズが非常に大きくなってきています。このようなことを言うと、『農学部は数学嫌いの学生が…』みたいな声が聞こえなくもないですが、人工知能の開発やビッグデータ・サイエンスの台頭に対応できるような人材輩出にも対応可能な分野であると私は考えます。つまり、当分野は今、アツいのです。あと、(それなりに真面目にやれば)数字に強くなれます。これだけでも結構メリットは大きい気がします。

私は、大学受験は物理・化学選択でしたが、高校の授業などを通じて遺伝に多少興味があったのもあり、当分野を卒論研究の場に選びました。パソコン操作がそこまで苦ではなかったことも理由の一つでした。この選択が正しいかは知りませんが、今のところは後悔していません。学生の皆様も、これから進学・進級とともに、複数の選択肢から自分で決めなければならない局面をいくつも迎えると思います。これは個人的意見ですが、「面倒くさいからこっち」とか「〇〇は嫌だから△△」のように、ネガティブな理由で決めてしまうと良い方に転がりにくいと思います。ポジティブな理由で決めた方が長続きするし、無理することには繋がりにくいのではないかと思います。学生の皆様には、自らのやりたいことに精一杯取り組んでもらえればと思います。そのなかで、『動物遺伝育種学に関する研究がしたい!』と思ってもらえると、とても嬉しいです。是非一緒に、畜産が抱える諸問題に挑戦してみませんか???

博士課程2年のとき学会@中国に参加した際見つけた一本角の牛の像と私です

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