研究紹介
私の研究について
原 健士朗（基礎生物学研究所）CV
私は、繁殖学の研究を行っています。特に興味を持っていることは、動物が安定的に配偶子を産生するしくみです。ここでは、私の研究についてお話しします。
配偶子は、動物の繁殖の要です。配偶子を安全かつ思いのままに制御することができれば、優良動物の効率的生産や希少動物の保護に役立ちます。私は、動物の体の中に秘められた配偶子産生のしくみを理解し、これを巧みに利用することが、新たな配偶子制御技術を開発するうえで最も近道なのではないかと考えています。
現在、動物の精子幹細胞についての研究を行っています。精子幹細胞は、繁殖期間を通じて安定的な精子産生を支え続ける重要な細胞です。これまで永い間、精子幹細胞は、ある特定の形態と遺伝子発現を示す細胞であると信じられてきました。しかし、私たちの最近の研究成果から、従来の定説と異なり、幹細胞は様々な状態（異なる形態や遺伝子発現など）の細胞の集まりであるとする新説を提唱するに至りました。さらに、従来、精子幹細胞は精巣内の特定の場に留まり続けていると考えられてきましたが、実際は同じ場所に留まることなく活発に動き回っていることも明らかにしています。
幹細胞として指をさせる細胞種が変われば必然的に利用の仕方も変わるでしょうし、新たに発見した幹細胞の動きを利用すれば新しい発生工学技術がうまれる可能性があります。このように、配偶子制御に対して新たなヒントを提供できることが、繁殖学における私の研究の有用性だと思っています。
推薦: 中村 隼明（基礎生物学研究所）
