研究紹介

私の研究業績の解説(第二回)

早川 徹(帯広畜産大学)CV

勢いで「第一回」だとか「第二回へ続く」とか書いてしまったがために(きっとどこかの段階で却下されるだろうと高を括っていたのもありますが)、今回も業績解説をしたいと思います。

前回、ミオシンについての説明の中で、「筋肉の収縮機構はほぼ解明されている」と書きました。一方、ミオシンのもう一つの機能である重合体(太いフィラメント)形成については未解明の部分も多く残っています。これまではミオシン尾部のある領域同士の相互作用によって重合するとの仮説に基づき、その領域を特定しようという研究が多くなされてきましたが、どうも一筋縄にはいかないようで決定打が出ていない状況です(個人的には、ミオシン一分子の構造で片付けようとしていることに少々疑問を感じていますが)。

この「重合体形成機構」が、私の研究テーマである「ミオシンの水溶化」とどう関係しているのか?

私は、重合体形成と水溶化は「表裏の関係」にあると考えています。重合体形成のメカニズムが解明されれば、「水溶化」のメカニズムもある程度明らかにできるのかなと期待しています。反対に、「水溶化」のメカニズムを明らかにできれば、重合体形成機構の解明にも大きく貢献できるとも考えています。ミオシンは筋肉の主要な構成因子のひとつであることから、その重合体形成機構の解明は生化学や生理学の分野で大きな意味を成すと考えられます。つまり、水溶化機構の解明は、畜産物利用の分野に限らず、異分野にも大きなインパクトを与えることができると信じています。いささか突飛な考えかもしれませんが、筋肉の修復・再生などの医学分野へ応用できれば面白くなりそうです。

私自身、研究面では畜産の畑でずっと育ってきましたので、畜産業界に貢献することを最大のモチベーションとしています。しかし、自分の研究が異分野でイノベーションを起こし、その分野の研究が発展すると考える(妄想する?)となかなか楽しくなってきませんか?また、「逆も然り」で、自分の分野とは少し外れた分野を知ることによって、自分の研究のヒントとなることも十分にあり得ます。同じ研究対象を違う視点で見ていたり、異なる手法で実践していたりしている研究者も少なからずいると思いますので、畜産学会に軸足を置きつつ、いろんな学会にも是非足を運んでほしいと思います。

研究内容が畜産分野から外れてくるとともに、このエッセイも“業績解説”の範疇から大きく外れてきました!

推薦: 江草 愛(日本獣医生命科学大学)

前回と同じアングルですが、雪が積もっています(2013年12月16日撮影)。今年はまだまだ少ない方なのですが。

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