サイエンスナイト
「サイエンスナイト麻布」
- 日時:
- 2019年3月29日(火) 17:30〜20:00
- 場所:
- 麻布大学 生協食堂(テラスいちょう)
- 演者:
- 藤村達也 博士 (インターファーム株式会社)
- 西山泰孝 博士 (日本ハム株式会社 中央研究所)
- 世話人:
- 新居隆浩(広島大)
- 協賛団体:
- 一般財団法人旗影会
近年、畜産学の研究は基礎から応用まで幅広く展開されていますが、それらの共通目標は畜産業への貢献です。第8回目となる本サイエンスナイトは、参加者が自身の研究の出口を意識する機会とするために、「いかにして研究成果を生産現場に還元するか」をテーマに開催されました。
まず、1人目の演者である藤村氏からは、日本ハム(株)中央研究所とインターファーム(株)がこれまでに行ってきた家畜生産の課題解決への取り組みと、TPP11の発効や感染症拡大といった日本の畜産業界が置かれている状況について分かりやすくお話しいただきました。畜産に関わる課題の解決のためには、現場を知る人物との対話はもちろんのこと、畜産の産業構造を理解することも重要であると教えていただきました。また、いかに技術の面で良いものを開発しても、簡易さやコストなど、現場で利用されるためには研究成果と別の視点でのハードル(ダーウィンの海)を越える必要があるという点は、私たち研究者にとって見て見ぬふりをしがちな問題ではないでしょうか。
2人目の演者である西山氏からは、ご自身が歩まれた大学の基礎研究から企業の研究開発までのキャリアパスと、氏が携わった製品開発の失敗談を通して、製品開発に必要な視点についてお話しいただきました。植物分子生物学のバックグラウンドを持ちながらも、多様な知識を吸収し、畜産学ベースの製品開発を担うという西山氏の生き方は、若い学生さんたちに「何にでもなれる勇気」を与えるものになったと思います。失敗談にあった「病気をクリアに発見できる技術を開発しても、現場の人がそれを発見する必要を感じなければ使われない」というお話は、まさに研究者と現場従事者の意識の相違を表す面白い例でした。
2名のご講演の後は、参加者を2グループに分けて、全員が「自分の研究内容」と「その成果の応用方法」についてグループ内でショートプレゼンテーションを行いました。各発表内容について、演者の先生からのアドバイスをいただき、参加者同士で白熱した議論も交わしていました。参加者にとって、自身の研究を見つめなおす良い機会になったのではないでしょうか。
最後になりましたが、当企画の開催にあたり協賛いただいた財団法人旗影会、貴重な企業の研究についてご講演頂いた演者の先生方、活発に議論し会を盛り上げてくださった参加者の皆様、そして運営にご尽力下さいました中村先生をはじめ若手企画委員と関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。
文 新居 隆浩(広島大学)