研究者を目指すあなたへ

人生どうなることやら

小川 伸一郎(東北大学)CV
202年1月

ここでは、私の大学志望の動機や就職関連をテーマにつらつら書こていこうと思います。長文・乱文で読みにくいところ多々あるかと思いますが、少しでも学生の皆様の参考になりましたら幸いです。それではよろしくお願いいたします。

まず、2019年時点での私の略歴は以下のようになります。

  • 2012年3月 京都大学農学部資源生物科学科 卒業
  • 2014年4月 京都大学大学院農学研究科応用生物科学専攻 修士課程修了
  • 2015年4月~2017年3月 日本学術振興会特別研究員(DC2)
  • 2017年3月 京都大学大学院農学研究科応用生物科学専攻 博士後期課程修了
  • 2017年4月より現職(東北大学農学研究科・助教(任期5年))

大学へは一浪して入りました。現役で落ちた主な理由は、センター試験ズッコケによるやる気の喪失です。一浪のときも、第一志望は京都大学の応用生命科学科でしたが二次試験の数学で大爆死し、何とか第二志望の資源生物科学科に引っかかってくれました。一年間予備校に通わせてくれた両親に大感謝です。小学生の時に罹った病気で入院した際、治療の副作用が少ない食事療法で直していくことになったのですが、当時大嫌いだった生トマトを懸命に食べたらケロッと治った経験から『食が大事』と思うようになり、農学部を志望するようになりました。大学受験の時期から学位取得に対する憧れはありました。ただ、当時は、大学での研究とは白衣を着て薬品をたくさん使いバリバリ実験する、というイメージでした。それがまさか、今は主にパソコンを用いた計算系になるとは夢にも思いませんでした。

私は肉が大好きです。焼肉なんて最高です。京都大学では、霜降り肉を生産する黒毛和種を対象とした研究が伝統的に行われています。『和牛肉をもっと美味しく、もっと安くして、たくさん食べられるようにしたい』というのが私の密かな野望(願望)でした。これを叶えられそうな研究室に行こうと考えつつ履修済みの授業資料を見返してみたとき、集団レベルでアプローチする遺伝育種学分野が良いんじゃないかと感じ、研究室の扉を叩きました。その頃から、牛のゲノムに関する情報が急速に集積され始めたことから、得られたゲノム情報を活用した効率的な育種方法の開発に関する研究が世界的に推進されていました。私は、卒論テーマとして、ゲノム情報を用いた黒毛和種の枝肉重量(≒牛一頭からとれる肉の量)の分析を貰いました。早い時期から分野の最先端にあたる研究をさせてもらえたことは、貴重な経験でした。

一方で、最先端の研究を行うということは、研究室にノウハウが蓄積されていないことを意味します。つまり、基本的には自力で頑張ることを意味します。私の場合、分析すべきデータは既に得られていたので、何とかして分析手法を習得する必要がありました。卒論で扱ったデータの最終的な大きさはタテに900弱、ヨコに40,000弱であり、人生で初めて触れるサイズでした。Excelでチマチマ編集するには時間が足りなさすぎる…ということで、人生初のプログラミングというものを独学で習得しました。恐らくここで、研究室選びをポジティブな理由で選んだのが活きたと思います。研究のような挑戦的要素の強いことへの取り組みにおいて、試行錯誤は不可避です、が、試行錯誤の期間が長くなると気が滅入りがちです。ネガティブな理由で研究室を選んでしまうと、『これやってもダメなんじゃないか』とか『どーせ失敗するからやる意味ない』のような逃げの思考に陥りやすいのではないかと思います。プログラミングの習得は、外国語の勉強と通じる部分があると思います。適切な文字列を入力しないとパソコンが命令を理解できず、エラーが返ってきます。エラーが出続けるとイライラが募ります、が、私の場合、プログラミングさえ習得できれば面白いことが出来るようになるはず、と思えたことで何とか勉強し続けられました。動機付け(モチベーション)とその維持はとても大事だと感じさせられました。

さて、就職ですが、修士に一度、就職活動しましたが結果は惨敗でした(就職氷河期だったと言い訳しておきます)。ただ、博士課程に行きたい気持ちが強くあったのも確かだったので、思い切って就職活動を延長せず研究に専念することにしました。今にして思えば、これはかなりリスキーな選択だったと思いますが、指導教員と研究テーマに恵まれたおかげで学振(DC2)に採用され、毎月決まった額のお金を貰えるようになり、首の皮一枚でつながりました。また、早くから論文執筆や学会発表をこなして業績を貯められたことで、学生支援機構による奨学金の返済が(一部)免除となったことも大きかったです。さらに、業績を貯める過程で参加した学会の懇親会に参加することで自分の存在をアピール出来たことが、現職の採用へとつながった部分があったではないかと思います。良く言われることだと思いますが、私の就職に関しては本当に『運と縁』に救われ続けてきたと感じますし、きっとこれからもそうだと思います。

就活ルールの廃止などに影響され、私のように学部からストレートで学位取得を迎えようとする学生は減少し続けるかもしれません。夢を追いたい気持ちはあるけど、奨学金の返済など、生きていくうえでお金の心配が…と学生さんが感じても、それは素直な反応だと思います。学生の皆様に知ってもらいたいのは、研究者へのなり方は一つではないということです。大学以外の研究機関や企業の研究職に一度勤めてから学位をとる、または、仕事しながら学位をとることも可能です。また、研究活動は研究費がないと不可能ですが、学生が応募可能な研究費も存在します。大学や学部によっては支援制度が充実しているので、関係部署に問い合わせてみるのも有りです。賞与型奨学金を提供する企業・団体を探すのも手です。やりくりのしかたは他にも色々あると思います。しかし、共通して言えることは、「どのような信念をどのくらい強くもって」「どのくらい行動に移せるか」が重要ではないかと思います。とくに後半の「どのくらい行動に移せるか」は、私自身も、常にアウトプットを意識しながら研究を続けていきたいと思っています。現職は任期付と未だ不安定ではありますが、将来性のある研究に邁進していきたいと思います。

朝日の反射する朝6時の東北大学農学部研究棟です。棟左上には満月が見えます。

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