研究者を目指すあなたへ
私が研究者になるまで
相澤修(日本大学生物資源科学部動物資源科学科)CV
2018年6月
はじめまして。日本大学生物資源科学部で助教をさせて頂いております相澤修(あいざわしゅう)と申します。現在は、乳汁中の生理活性物質に関する研究を行っています。これから研究者を目指す皆様の役に立つかはわかりませんが、私の経歴を簡単に紹介させて頂きます。
私は神奈川県横浜市に生まれ育ちました。横浜市といっても、周りには田園風景が広がる、港ヨコハマのイメージからかけ離れた環境です。今思えば、周囲の環境もあって、幼少期は、毎日のように小川に腰まで浸かってザリガニを採ったり、夏は雑木林へカブトムシやクワガタを採りにいったりと、生き物に囲まれた生活をしていたのを覚えています(勉強は・・・)。この点は、生物系の研究者に共通する部分が多いかもしれません。
私が「研究」というキーワードをはじめて具体的に意識し始めたのは高校時代にまで遡ります。というのも、高校生物を担当して頂いた教諭は、現在私が所属している研究室の大学院を修了しており、大学院時代のエピソードを聞かされているうちに、「そんな世界もあるのね(うっとり)」と洗脳(?)されていったのを覚えています。今思えばそのような強い影響を受けつつ進学先を決定し、さらに3年次には同じ研究室へと配属され、私の研究生活がスタートしました。学部から大学院にかけて、神経系の発達機構に関する研究に従事し、博士後期課程では日本学術振興会特別研究員-DC2として研究活動を行うことができました。
その後、博士号を取得し、研究者になりたいという希望からポスドク先を探しておりました。基本的にコネは無かったので、大学・研究所を問わずCVを送り、返事を待つという作業に明け暮れていました。その返事のほとんどはいわゆる「お祈りメール」でしたが。そんな中、唯一こんな私に興味を持って頂いたのが、前職である国立精神・神経医療研究センター神経研究所の和田圭司先生(現・神経研究所所長)でした。神経研究所は、医学系の研究所であり、私はそれまで一貫して農学系の大学で研究活動を行っていたにも関わらず、「一度会いにおいで」と声を掛けてくださり、その後、ポスドクとして採用して頂くこととなりました。この出会いは、私の研究者人生での大きな財産であったと感じています。このポスドク時代に、これまでとは異なる分野で研究することで新たな視点や考え方を身につけることができたのは、研究者としての幅というか奥行きというか、そういったものが広がったという意味で貴重な経験であったと思います。また、ポスドクは、基本的には自身の研究のことだけを考えておけばいいわけで、その点に関してもとても幸せな時間でした(もちろん今が不幸せなわけではありませんが)。
これから研究者を目指す皆様にお伝えしたいのは、異分野に飛び込むことを恐れないでくださいということです。しっかりと自身の専門性を身につけてからという前提ではありますが、研究の幅を広げるという意味では、いずれかのタイミングで全く異なる分野の空気に触れるということが自身を伸ばす上で大変役に立つのでは、と考えています。自身が培ってきた分野と新たな分野が絶妙な化学反応を引き起こし、思ってもみない展開を生むことをポスドク時代に経験してきました。そして、それは現在行っている研究活動へとつながっています。現在は、再び農学系の大学において教員として研究と教育に携わっていますが、ポスドク時代の経験を生かして学生とともに「ワクワクドキドキ」するような研究を行なっていきたいと考えています。研究のモチベーションを保つには、この「ワクワクドキドキ」が必要不可欠だと思っています。この記事を読んで頂いたこれから研究者を目指す皆様もそんな気持ちを持って研究活動を続けて、いつかどこかでお目にかかれたら幸いです。