研究者を目指すあなたへ

私が研究者になるまで

小宮佑介(北里大学獣医学部動物資源科学科)CV
2017年1月

私は2016年7月1日に北里大学獣医学部食品機能安全学研究室の助教に着任しました。これまで九州大学大学院の畜産化学研究室にて、栄養成分と骨格筋機能、食肉の質に関して研究を行ってきました(現在も学生を兼務しています)。美味しいお肉を食べると幸せな気持ちになる、それに貢献したい(自分のためでもあるのですが笑)という目標のもと、今後も変わらぬスタンスで研究に取り組んでいきたいと思っています。これから研究者を目指す方々の参考になるかは分かりませんが、私の歩んできた経歴を紹介します。

私は修士課程→社会人(約1年間)→博士課程(現在3年生)という過程を経て、現在の職につきました(博士課程3年生兼助教という変則的な形ではあります)。幼い頃から食への関心が非常に強く、特に迷うことなく進路は農学部に決まりました。いざ大学生になると、勤勉な学生だったわけではなく、講義の試験成績も中の中ぐらいでした。実験になっても、学部生の頃は実験を早く終わらせてなんとか早く帰ってやる、という研究者とはベクトルの異なるモチベーションで実験に取り組んでおり、研究室に配属されてからも指導教員に言われた実験をただこなすような学生でした。そんな私が研究面白いなと初めて感じたのは、実験で行き詰まったときでした。卒論研究で実験手法の確立を行っていたのですが、なかなかうまくいかず、毎週のように先生にうまくいきませんでした、と繰り返し報告だけをしていました。それまでは実験の方針は先生から示されていたのですが、ある日の先生とのミーティングで「実際に手を動かしているのは君だから、どうすればいいか自分で考えてやってみて」といったニュアンスのことを言われたことを覚えています。この言葉で初めて関連した文献を調べ、うまくいかない原因がどこにあって、何をどう工夫すればうまくいくのか、などと考えるようになりました。そして自分で考えて、手を動かし、出た結果を考察するようになっていきました。その結果、実験を進めるほど結果が出るまでの待ち遠しい時間や、試行錯誤してそのアイデア通りに研究結果が出た時の喜びが増していき、いつの間にか研究を好きになっていました。またともに遅くまで実験をし、研究の話や親身にアドバイスをしていただける先輩の存在があったことも研究を好きになった要因の一つだと思います。

研究にはまっていった私ですが、就職活動の時期を迎え、研究者になりたいという想いはあったのですが、博士課程卒業後の不安な一面を考え、健康食品会社に就職しました(実はこの時学振DC1も申請していたのですが不採用になりあっさり博士課程進学をあきらめる)。その後、社会人として約1年働きました。そこでの研究は現象を追い、私が最も関心を抱いているその現象に対する"なぜ生じたか"を探求することはなく、働いているうちに物足りなさと大学での研究への想いが湧いてきました(もちろん全ての企業がそうではないですし、現象を捉える研究は非常に重要です)。そんな折に、指導教員とメールのやり取りをしていた際、私の修士論文テーマの研究が全く進展していないことを聞きました。そして「大学に戻ってきて君がやって見てはどうか」という、先生からしたら何気ない一言だったのかもしれませんが、その一言で心を動かされ大学に戻り研究者になろうと思いました。ここだけを見ればこれだから最近の若者は根性がなくてすぐ会社も辞めてしまう。少なくとも3年は働きなさいよなどとおっしゃる方もいる(いた?)かもしれませんが、一度決意したら辛抱できないのが私で、すぐに退職することを決意しました。この時に最も心配させたのは母だと思いますが(精神的にも、金銭的にも)、「後で後悔するよりも、今やりたいことをやりなさい」と快く背中を押してくれました。感謝しています。博士課程に戻ってからは研究に打ち込み、現在に至ります。学位取得のため、これから博士論文を書かねばならないのですが。。。

振り返って今思うことは私のこれまでの過程では分岐点で必ずと言っていいほど人からの影響、支えがあったように思います。そのため私は、研究のスキルもさることながら、研究を好きな気持ちと人との関わりを大切にすることが研究者になる上で大事なのではないかと思います。だからドクター行こうかな、博士卒業した後大丈夫かなと考えている人はとりあえず行ってみたらいいと思います(この言葉に責任は持てませんが笑)。周りの人がきっと助けてくれます(他力本願という意味ではありません)。自分が頑張っていたらどこかでそれを見ていて評価してくれる人がいると思うので大丈夫です。

いろいろと書いてきましたが、私はまだまだ駆け出しで未熟な研究者です。これからもたくさんの人と関わり、支えられながら研究者として邁進していきたいと思います。

写真は着任先の北里大学でのバーベキューの様子です。青森はまだまだ未知の世界ですが、楽しくやっていけそうです。

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