研究者を目指すあなたへ

アメリカへの研究留学について

久保田 海雄(University of Kansas Medical Center)CV

  • 「お宅の抗体“また”働かないんだけど?お金返して!」
  • 『そんなはずはない。うちの二次抗体と発光基質使えばうまくいくから。』
  • 「試してもいいけど、もしダメだった場合、今まで無駄にした時間、試薬、サンプルとか全部弁償してね。 それと、ただ確認のためだけに費やす今からの時間もね。ちなみに、うちにはこの遺伝子の強制発現とノックダウンのコンストラクトあるから、 すでに100%自信あるんだけど?」
  • 『・・・今すぐ返金させていただきます!』
  • 「あと、この前注文したやつまだ来てないけど?」
  • 『送料はこちら負担で、今すぐ深夜直行便で送ります。翌朝までに到着しない場合には、新たな手段を取らせていただきます。』
  • 「オーケー。ありがとう。いい一日を!」

この会話は、アメリカでの研究生活において重要なことを示唆している。つまり、自分の権利や意見はしっかりと主張しないといけないということである。このような業者とのやりとりだけでなく上司とのディスカッションでもきちんと発言しないといけない。遠慮すると、自分(やデータ)に自信がなく、嘘をついているとまで思われてしまう。そのためには、多少の誇張も許される、かもしれない。そう、このエッセイにあるような少しくらいの誇張は。

さて、さも私が頑張っているように書いているが、実は英語もろくにしゃべれない。日々実験三昧で、アメリカに住んでいてもろくに上達しないのだ。じゃあ、実験しないで英語の勉強ばかりしていた方が良いのか?そもそも両立できるのでは?その答えを出すために、考慮すべきことがある。【日本とアメリカでどちらの研究が優れているのか?】という質問への答えだ。日本とアメリカの研究は、本当にいろいろなことが異なっている。私の答えは、どちらも一長一短であるということ。したがって、今現在留学している自分としてはそこから何を得るのかが重要だと思うようになった。今では、そのために英語を学び、価値ある技術や知識などを得る機会をできるだけ逃さないことが大事だと考えている。このようなことを、海外で研究するまで考えなかったことは反省しているが、深く考えるきっかけを得たことは良かったとおもう。

なにはともあれ、片言でも頑張ってさえいればなんとかなるものである。それもそのはずで、例えば、インド人のボスにメンバーは全員インド人なんてラボはざらにある。これはインドに限らず、中国語やスペイン語、フランス語がメインであるラボもあり、これらのラボでは英語を使わず、結果、英語力はあまり上達しない。そう考えると、必ずしも英語を話せなくても、ある程度はやっていけることが想像できると思う。ではしゃべれなくてもいい!ということではなく、もし海外で研究してみたいけど、英語に自信がないし、、、と考えている人がいたら、ぜひ悩まずに挑戦してほしいということだ。でも、そんなこと言っていると、それって、【あまり能力の期待できない若者に、片道切符持たせて海外に厄介払いしているんじゃないの?】とか言われてそうなので、ここで最後に一言。その答えを出すのは今はまだ早く、これからの私、そしてこれを読んで少しでもアメリカに来てみたいと思ったあなたたちの、今後の頑張り次第である(と祈っています)。さぁ、一緒に頑張りましょう。

アメリカは広いです

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