研究者を目指すあなたへ

私がこの研究を始めた理由

加瀬 ちひろ(千葉科学大学)CV

野生動物の運動能力や感覚能力などの行動特性を明らかにすることで、人と野生動物の間に生じる様々な問題の具体的な解決策を提案する。これが私の研究テーマです。具体的には近年都市部でも問題となっている、ハクビシンによる家屋侵入被害を防止するため、ハクビシンの運動能力などについて研究をしています。このテーマに取り組み始めたのは今から9年前になるのですが、ここではそのきっかけについて少しお話したいと思います。

動物の研究者にありがちなパターンですが、私も子どもの頃から動物が好きで、獣医になりたいと思っていました。小学生の時は飼育小屋のウサギに、より快適な環境を提供するために、校内に生えている雑草を小屋に移植したり、当時多発していた子殺しをどうしたらなくせるのかを考えたりしていました。今思えば、この頃は動物福祉について関心が高く、自然と環境エンリッチメントなるものを模索していたんだなぁと、我ながらあの頃の自分に感心します。

幼少期は比較的都心部に住んでいたため、野生動物とふれあう体験は皆無でした。得られる情報は本やテレビからに限られていたことから、野生動物といえばトラやゴリラなどのイメージが強く、大人になったら海外で絶滅の危機に瀕した野生動物を助ける仕事をしようと考えていました。高校生になり、野生動物の保全活動に取り組むには獣医でなくても良いのではないか、と思い始め、大学卒業後は一刻も早く現場に行けるよう、4年制の動物系学科に入る事を決めました。まさか、その後9年間も大学にいることになるとは、この頃は想像もつきませんでした・・・。

今の研究テーマに取り組むようになったのは、研究室に配属されてからです。それまでは野生動物の問題といえば海外の希少種についてしか知らなかったのですが、日本では全国的に野生動物による農作物被害等の問題が深刻化しているということを初めて知ったのです。それまで自分が得ていた情報の偏りに反省しつつも、日本の野生動物の問題こそ、解決のために自分も貢献したいと思いました。それからは研究室の先生方から愛の鞭をビシバシ受けつつ、情熱と努力でひたすら突き進み、今に至っています。実際には、研究に着手するまでにも色々あったのですが、それはまたどこかで。

さて、常々自分は幸運だなと思います。一つは、自分の人生を捧げたいと思えるテーマに出会えたことです。そしてそれ以上に恵まれているなと思うのは、たくさんのカッコイイ人たちに出会えたことです。肩書きに囚われず常に情熱的で、妥協せず、組織と闘い、それでいて遊び心を忘れない研究者の背中を見せてくれた先生を筆頭に、公務員とは思えない自由な発想で柔軟に戦う人、自分にとって今足りないものが何かを気付かせてくれた人などなど、その他にもたくさんいます。いつか自分もこの人たちと同じ土俵で仕事をしたい、そして自分も日本の野生動物問題の解決に少しでも貢献したい、と思いを強くさせてくれたのは、人との出会いが強く影響していると思います。今では自分が大学教員として学生を指導する立場になりましたが、学生にカッコイイ背中を見せられるよう、日々精進!と情熱を燃やしています。

高校生や大学生のみなさん、もし、自分が何をしたいのかわからないと思っていたら、とにかく気になることに色々と手を出してみてください。今は手を出したものが散漫でも、いつかそれらが繋がる時が来るかもしれませんし、それを糸口に身を焦がすような情熱と出会うかもしれません。自分が変われば、世界が少しずつ変わります。そして、これから出会うたくさんの人との関わりを大切にしてください。自分の人生に衝撃を与える人との出会いは、明日訪れるかもしれません。そんな風に考えるとワクワク・ドキドキしませんか?

推薦:新村 毅(基礎生物学研究所)

銚子のキャベツ畑

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