研究者を目指すあなたへ

1人前の研究者を目指すポスドクより

鈴木 貴弘(川崎医科大学)

私は、まだまだ未熟なポスドクです。ですから、深い話は出来ませんので、私が研究者を目指すいきさつについて語らせて頂きます。

現在、岡山県倉敷市の川崎医科大学にて研究活動をしています。畜産学と無縁なのではと思われた方もおられるかもしれませんが、私は九州大学大学院の畜産化学研究室の出身です。縁あって川崎医大にて、学生時代より引き続いて骨格筋幹細胞(サテライト細胞)に関する研究を行っております。日々、ミクロな視点から骨格筋(食肉)科学への貢献を目指しております。サテライト細胞は、動物の発生や成長で筋肉を作る大切な役割を担うだけでなく、成熟した筋肉の肥大や、運動や怪我などによって傷ついた筋肉の再生にも関わるとも考えられています。よって、サテライト細胞の研究は筋生理学の基礎となり、「家畜の食肉生産能力のUP!」というアウトプットに繋がると期待しています。最近では、サテライト細胞を培養して人工肉を作る試みもあります(正直食べたくないけれど)。

1人前の研究者を目指すためポスドクになった私ですが、当初は研究の毛、否"け"の字も"情熱"もありませんでした。農学部の志望理由は、入学後に専門分野を選べるし、理系で女子が多そうだったから。分野配属までは「ただモテたい」との思いから(今もですが)、ロック研究会にてドラムやキーボードに熱中しました(現役です)。努力実らず、好きだった子がまさか自分のバンドメンバーと付き合うことになった時は、正直大学を辞めてやろうかと思いました。そうしてグレてしまった私は、本業である勉学を疎かにし、専門分野をインスピレーションだけで選び、ラボは学生実習が楽しかったことと先輩からの勧誘で決めました。そのため、骨格筋ましてやサテライト細胞の知識など皆無でした。この適当さからか、ラボ配属時にサテライト細胞と出会えたのにも関わらず、あまり研究に打ち込めませんでした。しかし、そんな劣等生にも研究発表の機会は迫って来るもので、先生や先輩方に鍛えて頂いているうちに、焦りを感じて研究に取り組むようになりました。そうすると、次第に実験の醍醐味が少しずつわかり始めました。結果を観る前のドキドキワクワク感や、予想が的中した場合の爽快感や意外な発見はまさに快感です。すごく気持ちいいです。これが研究者になりたいという願望の起点でした。その後は、もっと実験が上手くなりたいという向上心と、サテライト細胞についてもっと知りたいという探究心が芽生えて、研究に対する情熱がどんどん湧きました。その結果として博士課程にまで進学し、現在の自分があります。

一般的に、研究者はもともとその分野に興味があって大学を選んだとか、幼少期から興味をもてる環境にあったなどという、"きっかけ"を持たれていた方が多いと思います。ですが、私は大学で研究を始めることでこの世界に魅了されました。まさに、究極の遅咲きです。もし学生さんなどで研究者を目指すための自信が持てない方がおられましたら、こんな輩もいるのだと思って、是非夢を諦めないで頂きたいと願っています。

最後に少し。所属が農学系から医学系となり、大きな環境の変化を感じています。特に、研究のアウトプットの違いです。私はあくまでも食肉生産への貢献ですが、こちらの先生方は筋ジストロフィーやアイスバケツチャレンジで有名になったALS(筋側索硬化症)など筋疾患への応用が目的です。そのため、同じような研究でも実験結果に対するイメージやその先の進め方が異なるので、とても良い刺激を受けています(頭皮を含め)。「外来きついな~、研究が趣味だから本当鈴木くんが羨ましい」とおっしゃる先生もおられるくらいで、研究に打ち込める今の自分は幸せなんだと実感しています。写真は、医大所有のドクターヘリと大学と付属病院。川崎医大は、ドクターヘリを日本で初めて(東海大と並んで)導入したそうですよ。

推薦:佐藤 祐介(宇都宮大学)

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