研究者を目指すあなたへ

乳牛の研究1年生

川村 健介(広島大学)CV

新しいモノ好きの性格が原因で,昨春から3D画像を使った乳牛のボディコンディションスコア(BCS)判定に関する研究を始めました。きっかけは,某雑誌に3Dプリンタの特集が掲載されていたこと。「おもしろそうだな~」と興味を引かれていたある休日の朝,自治会の草刈作業のために外に出てみると,同じ職員宿舎に住む工学部の先生が,新しく購入された3Dカメラのテストしているではありませんか!迷わず声をかけ,広大農場(西条ステーション)の乳牛で試してみることになりました。運よく乳牛の研究を希望する学生が研究室に配属されたこともあって,彼女の卒論テーマとして研究を始めました。

まずは乳牛の飼養管理とBCSの判定方法から,学生と一緒に勉強を始めました。ラッキーなことに,広島大学には乳牛の研究を専門とする先生方が多くいらっしゃいます。たくさんのご助言をいただきながら乳牛のBCS判定と3D画像計測を始めました。機器の選定や計測・解析方法など,半年近く試行錯誤を繰り返し,熱心な学生の努力の甲斐もあって,夏を過ぎた頃にはようやく満足のいく乳牛臀部の3D画像が取得できるようになりました。

さて次の課題は,これら乳牛臀部の3D画像情報をどのように飼養管理へ応用するかです。広大農場では,2011年に搾乳ロボットを導入し,以後,継続して体重や乳量などのデータを取得しています。これらのデータを提供していただき,まずは乳牛臀部の3D画像との関連性を見てみることにしました。その結果,運良く3D画像と体重,乳量,いくつかの乳成分と高い関連性が認められました。サンプル数が十分なものとは言えず,今後も継続して調査を必要とするものの,乳牛飼養管理における3D画像情報の新しい応用への可能性が出てきました。

今後の課題は,継続して3D画像計測を行うと同時に,計測から解析までの処理の自動化です。現在,広く用いられているBCS判定法は,家畜の肥痩状態(脂肪蓄積量)を簡便に診断する指標ですが,視覚と触診という主観的な判定方法でもあるため,判定者間による偏りが生じることがあります。また,飼養頭数の大規模化(多頭化)が進む酪農経営の現状において,多頭数のBCS判定には多くの時間を費やすことから,判定中に家畜へストレスを与えることも課題となっています。3D画像情報の利用とその自動化は,ボディコンディションと乳生産成績を省力的かつ客観的に判定する新しい飼養管理ツールになるのではないかと勝手に盛り上がっています。このほかにも,3D画像技術の畜産研究への応用には,まだまだ多くの可能性があると考えています。そんな淡い期待と不安を持って,春から乳牛の研究2年生に進級します。

推薦:友永 省三(京都大学)

乳牛臀部の3D計測風景(2013年10月撮影@広大農場)

乳牛臀部の3D画像の例(2013年作成@広大農場)

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