研究者を目指すあなたへ

私がこの研究を始めた理由

高橋 秀之(九州大学)CV

大学1年生の時は、Animal Scienceには興味がなく、畜産分野も家畜にもまったく興味がなかった。反芻胃って言われてもなぁ、というのが初めて受けた授業の印象である。だらだらと目的もなく2年生になった頃、家畜栄養学の実習講義を受けていた。学生に恐怖しか抱かせない博士課程の先輩が担当だったこともあり、相変わらず興味はなかったけれど、とりあえず受講をしていた。栄養学といいながら生理学みたいな講義の中、先輩はさりげなく言ったんだ。「ネコ科の動物は糖尿病になりやすい。なぜなら、肉食だから」。その時、歴史は動いた。本当かどうかなんて定かではないけれど、大学2年生の私には衝撃だった。私は、小学校1年生の時から猫を飼っていて、甘いものが大好きな奴だった。だけど、その猫は大学1年生の時に膵臓を悪くして亡くなっていたのだ。「猫ってそんな動物だったの?全然知らなかったよ。なんだ、この人。大学院生ってすげぇ~。研究者ってすげぇ~」。自分もこんな研究者になりたい。それと同時に、「あぁ~。自分が2浪をせず、この講義をもっと早くに受けていれば、うちの猫はもうちょっと長生きできたかもなぁ。」という自責の念だった。

そこから、私は、糖尿病に興味を持ち、グルコースを取り込むインスリンに出会い、インスリンが効かないインスリン抵抗性を有する反芻家畜に興味を抱くようになり、研究者人生をスタートさせるのである。

大学院生時代は、「栄養状態によるグレリンのインスリン分泌に対する作用」というテーマで羊を用いた研究を行っていた。そこで学んだことは、「インスリンは、血中濃度ではなく作用である」ということだった。インスリンの血中濃度が上がってもグルコース取り込み作用が伴わない場合がある。つまるところ、それがインスリン抵抗性というものなのだが、インスリンの濃度が上昇することで、はしゃいでいた自分は愚かだったと今では思う。その後、ポスドク時代に「ミオスタチン欠損牛である草原短角牛の栄養素代謝特性の解明」というテーマの中で、ミオスタチンとグルコース代謝の関係について研究を行っていた。この時は、インスリン感受性を分子レベルで研究することが出来、大変感謝をしているし、勉強になった3年間だった。

以上から言えることは、「私がこれまで研究を行ってきたのは、人との出会いがあったからこそ」ということである。Animal Scienceに飛び込んだきっかけも、研究を始めた理由もそこにつきると感じる。

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