研究者の日常

おとこ研究者異世界転生〜清流の国で親子水入らず〜

大塚 剛司(岐阜大学)CV
2025年4月

岐阜県は日本のヘソです(諸説あり)。どうも、私は日本の各地を転々として、岐阜に辿り着いた研究者です。今回は「研究者の日常」ということで、異世界(岐阜)に転生した男性研究者の子育てレポートとして、家族との平日のルーティーンを書かせていただきます。これから家族が増える予定の若手研究者、初めての場所で研究生活が待っている皆様の参考になりましたら幸いです。

私には2人の子供がおりまして、まだ5歳と3歳です。子育ての合間に研究に勤しんでおりますが(研究の合間に子育てではなく)、平日の私の朝は早く、夜明けと共に起床します。学生時代の私を知る方々からすると、おそらく言葉を失うことでしょう。まず、起きて何をするかというと、昨晩洗濯して浴室乾燥機にかけておいた全員の服を取り込んで畳み、しまいます。ちなみに浴室乾燥機を使うのは時短のためです。その間に妻は子供の朝ごはんの用意と顔面工事(妻曰く、化粧とのこと)を行います。そうです、我々は共働きですので二人して早起きです。妻は社会に出たい願望があり、下の子の断乳が済むやいなや、倍率十数倍もある公務員の中途採用試験に楽々通り(妻は私より何倍も優秀です)、働き始めました。ちなみに公務員を選んだのは、勤務体系にかなり融通が効くらしく、子育てがしやすいから、という理由だけ。その後私は自分で作った朝飯を掻き込んだ後、ゴミ出しして大学へ向かいます。妻は子供達を保育園の開園と同時に預け、早めに登庁(帰宅を早めることができます)。我が家は少し特殊かもしれませんが、朝はだいたいこんな感じです。

大学ではいつものように研究教育業務が波のように押し寄せてきて、さらに学部・農場の運営業務や会議会議会議…(たまにコーヒー)が終わった後、帰宅します。家に帰るとすでに保育園から回収された子供達と妻の食事が終わっているので(終わっていなければ子供達に食べるよう促す、下の子の食事介助、終わった食器の皿洗い等)、今度は風呂に入れます。ウチは誰と入るか選択制ですので、私であれば体を洗ったり一緒に遊んだり、妻であれば私は風呂から出た子供達の体を拭いてドライヤーです。そして服を着せたら歯磨きタイムですが、これも仕上げをするのはどちらか決まっていません。私なら子供達の歯を順番に磨き、妻であれば私は風呂を掃除して洗濯を開始します。そして寝かし付けは妻がやりますので、本を読んだりしている間に私は洗濯物を干して、浴室乾燥スタート。子供と妻が寝た後に夜飯を作って食べたら就寝といった感じです。こまごまとした名も無き家事や子供の世話は割愛しますが、この何十倍もあります。これらもどちらの仕事というわけではなく、気付いた人がやります。ちなみに帰宅してから子供が寝るまでは、なるべく子供の遊びに付き合います。ワッショイ(エクストリーム高い高いのこと)やポケモンごっこ(私はサトシ、妻はサトシの母でほぼ固定)、家キャンプ(毛布でソファにテントを貼る)、渋山ファミリー(子供の言い間違え:シルバニアファミリーのこと)、赤ちゃんごっこ(タオルドライ時にタオルで包んで抱っこし、バブバブと言いながら家中を練り歩きます。私が全裸でやる場合あり)、ダンス大会(with 猫)など、ごく一般的な遊びです。全て×2(たまに猫)です。そしてYouTubeを見てる時にサッと自分のことをします。

このようなルーティーンで平日の生活が続いていますが、まず我々が朝の動き出しを早めるのは、朝よりも時間に余裕のある夕方以降に、なるべく子供と遊ぶ時間やコミュニケーションを図る時間を作るためです。研究者は業務が不規則になりがちで、どうしても溜まった仕事をこなしていくと帰宅が遅くなってしまいます。なので私はなるべく朝早く大学に行き、前日の溜まった仕事や夕方以降にきた仕事などを翌日の朝に回すようにしています。研究者は裁量労働制がほとんどですので、可能な限り子供の都合に合わせることができます。ですが、やらないといけない仕事が溜まった場合は、子供が寝た後に大学に戻り、そのまま居室に泊まることもあります(寝袋完備)。また日々の業務は私と妻でなるべく固定しないようにもしています。妻の仕事が立て込んだ場合、病気の場合、実家に用事があって帰る場合は私がやりますし、逆に私が学会や実験で泊まり込む場合は妻がやります。特にお互いやってくれという事なく、自然にそうなります。我々は異世界に転生してしまったため、身内や友達など周りに頼る人物がいないからです(私は東京出身、妻は広島出身)。そう、毎日が4人(+猫1匹)で生活が回っており、毎日が親子水いらずなのです(清流の国なのに)。

研究者は大学で研究をしたい場合、自分の研究分野にマッチした(マッチしてなくても)募集がたまたま出た時に、業績を引っ下げて、数あるライバル達に打ち勝ってポストを得る必要があります。業績が乏しい研究者は大学の場所など気にしていられません。かく言う私もあらゆる大学にアプライしていた中、たまたま拾っていただけた岐阜大学のある岐阜は、面接審査の際に初めて訪れた異世界でした。大学教員同士の結婚の場合、お互いの就職先が別々になり、週末婚状態になる話もよく聞きます。私の場合は妻が非常に柔軟であることと、非常に優秀であることで、だいぶ得をしていますが、やはり頼る人が近くにいないと有事の際に苦労を強いられることもあります。夫婦が病気でダブルKO!になったら終わりですので、健康には最善の注意を払います。しかし家族全員コロナにかかった際はしょうがないので、39℃の研究者が子供の看病をしました(私はなぜか高熱でも普通に動ける人です)。特に子供はよく発熱やケガをしますが、その度に何度会議を欠席したことか…。流石に講義や実習、実験の場合は妻に出動してもらいますが、その他はもうしょうがないです。ですが会議などの運営業務は、若手研究者(もう若くないですが)の場合、あまり注意されないのが良いところではあります。運営に必要とされるポジションを得る頃には、子供の手がかからなくなると思いますので、それまでは熟練者の教授陣に頼ってしまいましょう。

いかがだったでしょうか?令和の今、当たり前の生活過ぎて面白くもないと思う方が多いかもしれません。各家庭でいろいろルール等もあるかと思いますが、我が家ではこれが普通です。ただ一部の、家事や子育てを“手伝っている”、“やってあげた”感覚を持った男性研究者に、少しでも伝われば良いかなぁと思います。誰がやるかなんて決まっていませんし、自分の家、自分の子供のことですので、基本全部自分でやりましょう。研究者の奥様方も、夫に家事や子育てを“お願いする”なんてことは不要です。自分のことなんだからやって当たり前!くらいの感覚で良いんです。特に異世界での生活が待っている場合、この感覚は重要になります。お互いが全部自分でやるという自覚があれば、自然にできなかった部分足りない部分が補填され、頼る人がいない異世界でも、家族が楽しく暮らせるようになるはずです。異世界転生してもチート技も使えず、凡庸な、しがない研究者のままですが、この異世界で必ずやり遂げなければならないミッションがあります。子供が巣立つまで成長を見届け、静かに枯れていくことです。幸い、唯一の能力である“タノシイマイニチ”は今の所使えています。今後は“カゾクノキズナ”ポイントを地道に稼ぎつつ、子供のためにランクアップ(昇任)をしていこうと思います。平日のルーティーンの一部を簡単に書くだけでこんなに長い文章になってしまうので、よりハード(ハードに楽しいという意味)な休日のルーティーンに関しては、また別の機会に・・・。

異世界の冬の光景(子供達と自宅マンション前でかまくら建設)

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