研究者の日常

研究におけるアウトプットの意義

小川 伸一郎(京都大学)CV
2025年1月

先日、大変光栄なことに、これまでの研究成果の一部に関して2024年度(第23回)日本農学進歩賞を受賞いたしました。本受賞は、日本畜産学会の推薦を受けて叶ったものになります。これに関して、のちの可能性のある皆さんのお役に少しでも立てばと思い、備忘録的に書き連ねます。なお、賞の詳細は公式HPをご覧いただくべきですが、授賞対象者は『当該年度の10/1時点で40歳未満』、授賞対象分野は『生命科学、環境科学、生物生産科学、食品科学、国際貢献、その他を含む広義の農学分野』となっています。

日本畜産学会HPでは5/2付で日本農学進歩賞候補者の推薦依頼(7/1〆)が告知されておりました。過去のメールを遡ると、6/18に差し掛かったあたりで東北大・佐藤正寛教授から「推薦したいけどいかが?」とお声がけいただいておりました。当時は日本畜産学会京都大会の実行委員会関連でバタバタしていたところでしたが、またとない機会と判断し、謹んでお受けすることにしました。

提出書類として推薦書の作成を求められましたが、書類の内訳は、『課題名』、『要旨』、『業績概要』、『業績に直接関わる主要な論文・著書10点以内』、『その他業績のうち主要なもの5点以内』、『略歴』、『連絡先』でした。私の場合は、前職・前々職で取り組んだ内容を取りまとめることとし、課題名を『国産豚肉の持続的な生産基盤強化を目指した新たな育種手法の開発』にしました。多分にSDGsを意識しつつ、賞名に『進歩』という言葉が入っていたので、それに沿うような書き方で書類を作成しました。同じ内容を言うにしても、書き方ひとつで心証は大きく変わり得ます。主要業績は10点以内との指定でしたが、最後の一行として、他に原著論文〇編、総説〇編、~~という形で数は書けます。とにかく空白を埋める気持ちで、関連業績として書けるものは突っ込んだように記憶しています。ともあれ、6/24の時点で推薦人経由で学会事務局に書類が提出されました。

その後、7/24に推薦人経由で学会からの推薦が決まった旨、推薦書の修正案とともに連絡がありました。修正については即日対応した模様です。その後はしばらく音沙汰なく、悶々とする日々…ではなくて、京大大会の実行委員会関連で忙殺されておりました。

京大大会が終わってしばらく経った10/9に公式HPをなんとなく見てみますと、何とまぁ前日10/8に受賞者が決定した旨、告知が出ておりました。奇遇です。そして翌10/10には公式に農学進歩賞授賞式のメール通知が来ました。授賞式は11/22の13時から東大農学部弥生講堂にて(昼食会12時~)、式後は祝賀会、という段取りでした。授賞式準備として、氏名・課題名の確認依頼(10/17〆)、講演要旨(和文および英文)(11/5〆)、講演用スライドファイル提出(11/19〆、持ち時間20分)の対応が必要でした。この発表準備において、推薦書に業績を詰め込んだことのしっぺ返しを食らいました。20分で話を収めるのはとても大変です。旅費は出ないのですが、偶然にも11/23・24と同会場で開催される別の学会に参加予定でしたので、何とかなりました。こういうときの運は良いのかもしれません。

授賞式当日は、弥生講堂内の一条ホールというところで講演しました。オンライン配信対応でしたが、授賞式の数日前に学会員用メーリスにて授賞式の告知がなされてしまいました。ハードルが高まる!授賞式前の昼食会だったと思いますが、倍率は例年通りおよそ3倍と聞きました。選考の重点について色々説明がありましたが、『持続可能性』『多様性』『気候変動対策』『疾病関連』あたりを高く評価したようです。私のネタに関しては、「現場応用を見据えた点が良かった」と言ってくださる審査員の先生がおられました。お弁当おいしかったです。

他の受賞者の方と少しお話ししましたが、皆さんとてもハツラツとしていてエネルギッシュに感じました。他の受賞者の課題名を見ますと本当に幅広く、講演会は聞いてて飽きのこないものでした。私のネタは家畜育種・統計遺伝ということで、極力数式をスライドに載せないよう苦心しましたが、講演会後の祝賀会ではその点を感謝してくださる方がいました。

祝賀会では挨拶代わりの一言を求められました。推薦いただいた佐藤先生や一部の学会理事の先生方が見守る(視線を背中で感じる)なか、数学嫌いの理系が行くのが農学部と揶揄されうるところ『家畜育種の人材を増やしたい』という願望を主張するとともに、若手企画委員会の存在もちゃんとPRしてきました。お酒入ってましたが、きちんと広報しております!

今回の受賞、勿論推薦くださった先生方・ご尽力くださった事務局の方々の協力のたまものであることは重々承知しております。それでも少しばかり自慢してよいならば、どんなに忙しくても「研究成果のアウトプットをおろそかにしない」点が大事だったかなと感じます。そのおかげで推薦書に業績を複数記載できましたし、アウトプット頑張っているな、と周りの方々が見てくれたことが大きかったと思います。そしてまた、こういったイベントに参加した際に別の形でアピールしていくことがさらなるアウトプットに繋がって、より大きな循環の環を形成していくきっかけになれば良いと感じました。アウトプット大事!

若手企画委員会の最終年度にこのような経験が出来て、感無量です。今後も若手企画委員会に所属する方の中から、このような賞の受賞者が出てくると、畜産が活気づいて良いだろうな、と感じました。

日本農学進歩賞授賞式・受賞者講演会に参加した際の写真

ご推薦くださった佐藤正寛先生との記念写真

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