研究者の日常
研究者になって良かったこと悪かったこと
新村 毅(基礎生物学研究所)CV
研究者になって一番良かったことは、自分が「なぜだろう?」と思ったことを明らかにできることです。理科に限らず、英語でも国語でも算数でも社会でも、「なぜだろう?」と思うことはたくさんあると思います。そして、その多くは、教科書に載っていなかったり、先生に聞いてもわからなかったりします。それを自分で明らかにすることができて、しかもそれでお金をもらうことができる・・・これが幼少時に親から刷り込まれた研究者像でした。研究をするということは、真っ白いキャンバスに絵を描くような、森に新しいものを見つけに行くような、そんな感覚があります。そして、自分が不思議に思ったことを明らかにした時の喜びは、何物にも変えられない爆発的な高揚感があります。もしかしたら、これを味わえることこそが研究者に与えられた特権なのかもしれません。
研究者になって悪かったことは、プロの研究者として生きることはつらいことですし、多くのことを犠牲にしていることかもしれません。しかし、例えば、サッカーの日本代表の選手達はどうでしょう?普通に友人と遊ぶことを捨て、お酒を飲むことをやめて練習に没頭し、いきなり全く違う環境で試合をしたとしても、試合に勝たなければボロクソに批判されます。プロのサッカー選手は、どんな厳しい状況であろうと結果を出さなければいけないということです。しかし、サッカー選手に限らず、プロのスポーツ選手は優勝したりした時に、涙を流して喜ぶことがありますが、その光景に感動したことはありませんか?想像を絶するような苦労と努力が報われた時の嬉し泣きは、多くの人に感動を与えているのではないでしょうか?お金をもらって研究をやっている以上、私もプロの研究者です。どんな状況でも結果を出すこと、そしてその結果に嬉し泣きできるよう苦しみ続けることは当然のことかもしれません。しかし、そのようにして出した研究結果を通じて誰かに感動を与えられる、誰かの何かが1つでも変わってくれる、そんなことができるかもしれないというのも研究者の特権かもしれません。