研究者の日常

研究者になって良かったこと悪かったこと

高橋 秀之(九州大学)CV

研究者になって良かったことは、食事の大切さや面白さを改めて認識できたことです。人も含めてだと思いますが、動物は、エサを食べ始めた瞬間から神経活性や内分泌ホルモンが劇的に変化をします。私はこの現象を学生時代に「祭り」と呼んでいました。動物を見ているだけではわかりませんが、体の中では祭りが始まったかの如く、色々なものが動き出します。ご飯を食べることは、動物の体にとって一大イベントの様です。特に、私は、採食を促進すると言われている消化管ホルモンであるグレリンの研究を行っていました。グレリンは、採食を促進するにもかかわらず採食開始直後から減少していきます。一方で、採食を抑制するホルモンがやはり、採食行動開始10分くらいで上昇してきます。今では、採食量のコントロールや恒常性のためにそのような現象が起こると考えていますが、学生時代に初めて経験したときは、不思議に思うとともに面白いなと思ったのを記憶しています。食べる前や食べ終わった後に、栄養の吸収のために様々なものが動き出すイメージはありましたが、まさか食べ始めた直後、また食べている最中から体の中で祭りが起こっていたとは思いもしていませんでした。私が研究者になって良かったことは、こういった生体内で起こっている目では見えない現象を捉えられる事です。また、一番はやはり動物の体の中って面白いなと思えることです。

研究者になって悪かったことは、特にありませんが、研究に対して仕事という感覚が出てきてしまったことでしょうか。実際に研究者にとって研究は仕事ですから、そういった感覚がでてくるのは当然なのですが。学生時代は、興味があり面白そうだなと思えば実験をし、「結果は後からついてくればよいか」くらいの感覚で研究を行っていましたが、今はなかなかそういかなくなりました。学生時代の感覚もだいぶ無責任なので反省するべきではありますが、研究については、なるべく「仕事」とは思わず「探究」であり続けたいと思っています。

海外が身近になったことも研究者になって良かったことの一つです。 この画像は、ニュージーランド(AgResearch 研究センター Animal Productivityグループ)に2か月間短期留学をした際に撮影したものです。

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