研究者の日常
研究者になって良かったこと悪かったこと
喜久里 基(東北大学)CV
皆様、こんにちは。東北大学、喜久里の記事をご覧いただきありがとうございます。私、同大学大学院農学研究科において主にニワトリのミトコンドリアエネルギー代謝を研究しています。研究の話はさておき、私が研究者になって良かったこと悪かったことをお話したいと思います。
研究者になって良かったこと
「自分の可能性を試せる」ことです。「自分で金(研究費)を稼いできて」「自分のやりたいことをやれるという職場環境はなかなかないのではないでしょうか。勿論、研究は全て自分でやれるわけではないので、他の人との協調関係次第では全てを自分の思うようにはできないこともありますが、他の職業に比べ、自分の努力が高度に反映されるのではないでしょうか。基本的に「実力・実績主義」の世界で自己研鑽・切磋琢磨できる点でやりがいのある職業だと思っております。
数年の浪人を経てもなりたいものになれなかった自分を奮起させるため、大学入学時より何かの博士号をとることを決めていた私ですが、そのときにはよもや大学の研究者になるとは考えてもいませんでした。英語と化学が大嫌いで大学受験に失敗した私が、まさか英語の論文を読みながら書きながら、栄養生化学やら酸化還元反応やらを研究しているのは今でも不思議です(そして今でも苦手です…)。大学研究者は場合によって夜遅く、一部を除き休日手当・残業代がでない、研究のみならず講義、学会・学内での実務、申請書書き、学生の生活指導…など仕事内容は複雑多岐に渡りますが、僕はいずれも楽しんでやってます。やることは多いですけれども、その分満足感・達成感などの見返りが非常に大きいです。頑張って書いた論文がAcceptされたとき・学生の実験が成功したとき・講義が面白かったとの感想を聞いたときのえもいわれぬ喜びは何事にも代え難いですね。
研究者になって悪かったこと
…はないですが、「研究者は世間ずれする」と言われることがあり、この真偽はともかく、閉鎖的な環境であることは否めません。とりあえず出会いはあまりありません(学生を除き…)。さみしいんです(笑)。また、研究者の性(サガ)ともいえるような職業病を度々発症します。例えば、米を炊く際、炊飯ジャーに注いだ水の位置をメスシリンダーのごとく目盛の位置に目線を合わせようとすること、コラーゲン入りの食べ物に嬉々としている友人に「それ食べても消化されるだけだから」と言ってしまいキレられたこと、ニュースでGDP(国内総生産)と言うのが聞こえるとグアノシン2リン酸を思いうかべること、などなど(お前だけだろという批判は受け付けません)。
いろいろ変なこと書きましたが、大学での研究職は非常に楽しくやりがいのある仕事です。卒業後に一般企業に就職する学生の皆さんにとって、大学での研究は数年だけのことかもしれません。しかし、学士号でも修士号でも博士号でも、この取得にいたるまでの経験・研鑽・努力は人生において非常に有益であることは間違いありません。ぜひ、研究を通じて「自分の可能性」を試してほしいですね。