公益社団法人 日本畜産学会

会員が2025「イグ・ノーベル賞」を受賞!

牛の虫よけにしま模様が効果的

-ダーウィンの時代からのシマウマのしま模様の謎にチャレンジ-

 

兒嶋朋貴会員(現:農研機構)・大石風人会員(京都大学)・廣岡博之会員(京都大学)を含む、愛知県農業総合試験場と京都大学の研究チームが、今年のイグ・ノーベル賞「生物学賞」に選ばれました!

日本畜産学会員の受賞は初となります。  おめでとうございます!

原著論文: https://doi.org/10.1371/journal.pone.0223447 

参考URL(nippon.com): https://www.nippon.com/ja/japan-data/h02550/ 

    

 シマウマのシマ模様の機能については、古く『種の起源』で有名なダーウィンをはじめ多くの科学者により100年以上議論されてきました。シマウマのシマ模様の機能の有力仮説のひとつに、吸血昆虫忌避があります。

 一方、サシバエやアブといった吸血昆虫は家畜生産性を低下させ、牛伝染性リンパ腫といった疾病を媒介する害虫で、世界中で家畜生産に多大な損害を与えています。本研究では、吸血昆虫忌避機能仮説を黒毛和種に応用し、シマ模様をウシに施すことにより、ウシの体表に付着する吸血昆虫数が減少し、その結果ウシが行う吸血昆虫忌避行動も減少するという仮説を立て、検証しました。

 この研究では、試験区として①ペイントをしない対照区、②黒色(褐色)の体表に白色ラッカーで白黒のシマ模様をペイントした白シマ区および③黒色(褐色)ラッカーで黒色のシマ模様をペイントした黒シマ区を設定しています。この研究で特に工夫した点は、③の黒シマ区は、ラッカー自体(臭いなど)が吸血昆虫の行動に影響を及ぼすかを調べた点です。

 その結果、白シマ区の付着昆虫数は黒シマ区と対照区に比べて半減し、忌避行動数も25%減少しました。本結果から、畜産学上では、ウシをシマ模様にすることは薬剤を使用しない新たな吸血昆虫対策となり得るとともに、アニマルウェルフェア向上や薬剤耐性といった問題を回避する可能性が示唆されます。さらに、シマウマのシマ模様の機能仮説についての議論においては、シマ模様は吸血昆虫を忌避するための機能であるとする仮説を実証し、本仮説が有力であることをさらに推し進めたことが本研究の重要な意義と考えられます。

(兒嶋 朋貴)