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第10回男女共同参画学協会連絡会シンポジウム参加報告

 10月7日に開催された第10回男女共同参画学協会連絡会シンポジウムに,畜産学会の若手奨励・男女共同参画推進委員会 より2名の委員が参加しました.このシンポジウムは,加盟する72学協会が集まり,講演会・パネル討論などを行うことに より,今後の科学技術の発展および持続可能な社会の実現に向けて必要とされる女性研究者の活用及びそのための支援策 などについて,有効な方向性を探ることを目的としています. 今年は「科学・技術における性差」というテーマに基づき分科会・パネル討論が行われた他に,連絡会発足10年目にあた ることから,これまでの活動を振り返り今後の方向性を考えるための討論が企画されました.

プログラム等の詳細はこちら (http://annex.jsap.or.jp/renrakukai/symposium1_10thsymp_2.html)



 第10回男女共同参画学協会連絡会シンポジウム参加報告

 10月7日に開催された第10回男女共同参画学協会連絡会シンポジウムに参加させていただきました. 午前の部(9:30〜11:30)では,3つの分科会に分かれて開催されており,その中で分科会3の 「キャリア形成のためのコツは
何か?」(担当:日本宇宙生物科学会)を聴講しましたので, その内容を主に報告いたします.  ***************************************************************************
 分科会3では,「キャリア形成のためのコツは何か?」の題で,4名の発表者の経験に基づいた プレゼンテーションがあり,各内容についてフロアを交えた意見交換を行った.
 まず,筑波大学の富田−横谷香織先生が「学会活動を通したキャリア形成」として,ご自身の経歴等を ご紹介され,研究職のポジションに着くまでのご苦労と,大学に職を得た後もステップアップ (職位の向上)の難しさについてお話しされた.女性が高い職位に付くには,突出した業績が必要であると 言及され(同じ業績では男性が有意となる為),学会活動で高い評価を得ても,それが本職には繋がら ない場合があり,評価システムを改革する必要があると述べられていた.
 また,JAXAの塩満典子先生からは「自分の研究費は自分で稼ぐ」とのタイトルで,キャリア公務員として 競争的資金の紹介や応募書類の書き方(アピールの仕方)等を豊富な統計資料を交えて解説いただいた. 特に日本は女性研究者の割合が他国と比べて非常に低いため,女性研究者の養成に関する内閣府の取り組 みを紹介された.
 続いて,明治大学の荻原一郎先生からは「研究者人生と研究課題」として,折り紙工学を確立された経緯と, 日本も海外に倣いPDと女性研究者の増やすこと,また高い知識と経験を有する定年退職者を研究員として 大学で雇用してはどうかと提案がなされた.
 最後に,同志社大学の笹尾真実子先生から「物理と社会」とのタイトルで,物理学の分野で評価され難い 女性研究者の実像や,学術界のムラ社会的要素について解説がなされた.何れの講演も内容が厚く, フロアからも自身の経験に基づいた意見が多く出され,活発な会となった.特に,笹尾先生が「学術の進歩 と男女共同参画のベクトルは同じ方向であることが必要」と述べられ,女性を優遇するのが目的ではなく, 科学の発展のためにより良い関係を築いていきたい,との意見には個人的に強く共感を持った.
 午後の部(13:00〜18:30)では,全体会議として第10回連絡会委員長ならびに来賓挨拶があり, パネル討論Iでは,「男女共同参画の過去・現在・未来―学協会連絡会10年の歩みを振り返って」と題して, 坂東昌子先生,小舘香椎子先生,栗原和枝先生から女性研究者が並々ならぬ熱意とパワーを持って研究を 続けた歴史や連絡会発足の経緯などについて解説がなされ,続くパネル討論IIでは,「男女の違いと科学・ 技術」と題して,男女の違いを脳や疾患背景などの医学的見地から解説された横浜市立大学・貴邑冨久子 先生と山口大学・松田昌子先生の講演の他,サイエンスコミュニケーターとして若い世代に理科の楽しさ を伝える(株)リバネス磯貝里子博士の取り組み,埼玉医科大学・平敷淳子先生から女性がリーダーになる 為の厳しい心構えについて,などの講演がなされた.
 本会には初めて参加させていただいたが,女性研究者の熱意に圧倒され,若輩の研究者である私には非常に 励みになった.今回の参加者は比較的キャリアを積まれた方が多かったため,学生も含め若い方が参加すれば, 更に有意義であっただろうと感じた.
(江草 愛)



 第10回男女共同参画学協会連絡会シンポジウム:雑感

 午前中の分科会2(テーマ「男女共同参画の取り組みの成果と今後の展望」),および午後の全体会議と パネル討論(テーマ「男女の違いと科学・技術」)に参加した.
 分科会2は,いわゆる”学振RPD”にターゲットを絞って,制度の解説・アンケート調査による制度の支持層 の解析・採択経験者による具体的事例紹介などから,その成果と問題点を考えるというものだった. 学振RPDとは,日本学術振興会(JSPS)の特別研究員制度の一つである「Restart Postdoctoral Fellowship」 のことで,出産・育児による研究中断後の円滑な研究現場復帰を支援することを目的として平成18年から 開始された事業である.制度自体の存在は知っていたものの,対象者が身近にいなかったため特に関心は なかったのだが,ポスドクという不安定な身分の場合,研究継続と出産の二者択一を強いられずに済む というメリットは大きいようである.経験者の発表について,特に以下の2点が印象に残った.
 <その1>公立保育施設を利用しようとする場合,「雇用証明書」の提出を要求されることがあるが, JSPSの特別研究員はこれが入手できないということ.発表者だけでなくフロアからも「資金提供元である JSPSもしくは在籍する大学等が何とかすべき」という意見が多く出た一方で,「そもそも特別研究員という のはJSPSの委託を受けた個人事業主のようなものなのだから,雇用証明を受けようとすること自体おかしい のでは?」という指摘もあった.確かに,個人商店の子であっても公立保育園には入れるのだから, 雇用証明書無しの手続き方法もあるはずだと思う.制度上の不備を解消しろと要求するためには,まずその 制度を十分に理解する必要があるだろう. 
 <その2>男性のRPD採択もあるということ.育児休業を取得する男性が,わずかずつでも増加傾向に あることから考えれば,男性が採択されても決して不思議ではないのだが,経験者の話を聞いてみると, かなり特殊なケースだったようだ.メモをとらずに聞いていたため詳細は定かではないのだが(すみません), 研究中断の理由が病児介護という予期せぬ事情があったことと,「フィールド実験系」妻と「理論系」夫と いう組み合わせだったことが,妻ではなく夫が”職業としての研究”を中断するという選択をした主たる 原因だったようである.夫婦揃って「実験系」=某かの組織が有する実験室を利用することが必須な場合に, 同じような選択をする確率はもっと低くなるのではないだろうか.研究以外の面で得られたものは大きかった と,発表者は笑顔で語っていたのだが.
 「男女の違いと科学・技術」のパネル討論は,短時間に多数の講演者を詰め込みすぎの感が強かったものの, 貴邑教授(脳の二つの性−セックスとジェンダー),松田教授(性差に基づいた医学・医療の考え方)の講演 は大変面白く聞くことができた.貴邑教授は,以前より,生物学的性差とみなされている現象に社会的/文化的 性差のバイアスがかかっている可能性を指摘してこられた方で,講演では,環境刺激が神経回路に性差を作る ことを実験データとして示された.通常の固形飼料で飼育したラットでは,雄の方が雌より迷路学習の成績 が良いが,粉状飼料で飼育すると性差が無くなるのだとのこと.この違いに性ホルモンの関与があるか否か については,時間不足ということもあって今一つ明確ではなかったが,流動食でも食べていたらこんな方向 音痴にならなかったかしらなどと思いつつ(もちろん冗談),大変興味深く聞いた.
                                           (須藤まどか)





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